1. 紹介
Rhinoの基本ジオメトリックオブジェクトは点、曲線、サーフェス、ポリサーフェス、ソリッド、軽量押し出しオブジェクト、サブディビジョンサーフェス、そしてポリゴンメッシュオブジェクトです。この章では、Rhinoでのモデリングのための数学的な基礎もある程度説明します。
このガイドでは、Rhinoによってサポートされている様々な ジオメトリタイプ について説明します。これらは基本的に、Rhinoが読み込み(開く)、作成、書き込み(保存)できるオブジェクトです。
ジオメトリタイプ
ここで言うジオメトリタイプとは、CADモデラーにおいて異なる 数学関数 を用いて3D形状を表現する様々な方法を指します。サポートされるジオメトリタイプはモデラーによって異なります。ジオメトリタイプで最も一般的なものはNURBSとメッシュです。いろいろなジオメトリタイプをサポートすることには、主に次の2つの利点 があります。
- 異なるニーズに対応: それぞれのジオメトリには利点があり、特定の形状を作成したり、デジタルスカルプティングや製造などの他の目的でダウンストリームで使用したりするのに便利に用いることができます。
- 他のプログラムとのやり取り: 特定のジオメトリタイプのみをサポートする他のアプリケーションとの間でファイルをインポートしたり保存したりできます。
Rhinoでサポートしているジオメトリタイプは次のとおりです:
- NURBSジオメトリ
- サブディビジョンサーフェス (SubD)
- ポリゴンメッシュ
Rhinoでは、1つのジオメトリタイプから別のジオメトリタイプに変換できます。変換は簡単にできるものもあれば、より多くの作業が必要なものもあります。
Rhinoの基本のジオメトリタイプで、厳密な許容差で高精度なフリーフォームモデリングを可能にし、また製造のためのジオメトリを活用しながら自由な形状設計を可能にするNURBSオブジェクトタイプについて、次に詳しく見ていきましょう。
NURBSジオメトリ
NURBS (非一様有理Bスプライン)は、単純な2次元の線、円、円弧、直方体から、最も複雑な3D自由有機サーフェスやソリッドに至るまで、どのような形状でも正確にモデリングすることのできる数学的表現方法です。NURBSモデルはその柔軟性と正確性から、イラストレーションやアニメーション、製造に至るまで、どのような過程にも使うことができます。
NURBSジオメトリは、自由で流れるような、それでいて機能性も重視される3D形状を作成するデザイナー達の業界標準です。Rhinoは、マリンデザインや航空宇宙デザイン、自動車の内装・外装のデザインに使用されています。家庭用品やオフィス用品、家具、医療機器や運動設備、靴やアクセサリーのメーカーでも、自由形状モデルの作成にRhinoが使われています。
点

点
オブジェクトは、3D空間の中の1つの点を表します。点オブジェクトはRhinoのオブジェクトの中で一番単純なオブジェクトです。点オブジェクトは、空間のどこにでも配置することができ、X, Y, Z座標で定義されます。点オブジェクトは、他のオブジェクトの配置の目安として使用されることが多くあります。一般的に、サーフェス/メッシュ/SubDの制御点/頂点は同等です。Rhinoでこのオブジェクトタイプを作成するには、
Point
コマンドを使用します。
曲線 (NURBS)

Rhinoの 曲線 はワイヤーのようなもので、真っ直ぐなものやねじれたもの、開いたものや閉じたものなど、自由に形を作ることができます。ポリカーブ とは、複数の曲線セグメントをそれぞれの端と端で繋いだものです。
曲線の制御点を使用して曲線を作成することも、指定した点を通るように曲線を作成することもできます。
サーフェス (NURBS)

サーフェス は厚みのない、伸縮自在な長方形のゴムのシートに似ています。NURBSの形式は平面や円柱のような簡単な形状から、フリーフォーム、彫刻したような形状のサーフェスに至るまで表現することができます。サーフェスは開いているかまたは閉じているかどちらかの状態です。サーフェスが閉じている場合は体積を計算できるので、 ソリッド とも呼ぶことができます。
Rhinoでサーフェスを作成する方法は基本的に2つあります:
- プリミティブから始める。
- 既存の曲線から始める。
サーフェスの構造
ここでは、サーフェスの目に見える要素について話をしましょう。サーフェスの重要な要素の1つは 制御点 の構造です。 **制御点を表示するには、オブジェクトを選択し、 キーを押します。
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制御点 は、NURBS曲線またはサーフェスの形状を定義します。ほとんどの場合、制御点はサーフェスに触れません。制御点はサーフェスを適切な位置に 保つ グリッド状のパターンに配置されます。これらの制御点を移動すると、オブジェクトの形状が変化します。
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アイソパラメトリック曲線 は、サーフェスを通る、目に見える線のネットワークであり、空間におけるその流れや形状を理解するのに役立ちます。一般的には アイソカーブ と呼ばれます。これらの曲線によりサーフェスの形状を視覚化しやすくなります。アイソパラメトリック曲線はサーフェスを定義しません。これらの曲線は、画面でサーフェスが確認できるよう単に視覚補助として使われています。サーフェスを選択すると、そのサーフェスのアイソパラメトリック曲線はすべてハイライト表示されます。
-
エッジ曲線 はサーフェスの境界を定める曲線です。これらはアイソカーブよりも少し濃く表示されるので、簡単に見分けることができます。 ポリサーフェス では、エッジ曲線はポリサーフェスを構成する各サーフェスパッチの外側の境界を定義します。
-
サーフェスシーム とは、回転によるサーフェスや、閉じた曲線の押し出しからできたサーフェスにある特殊なエッジです。基本的には、エッジが巻き付くような形で、開始点でサーフェスを閉じる部分を指します。
サーフェスのプロパティ (特性)
サーフェスの方向

NURBS サーフェスは4辺の性質を持っています。これは 制御点 の構造や アイソカーブ の向きからわかります。サーフェスの向きは一般的に、 U と V の2つで表します。
開いたサーフェスと閉じたサーフェス




開いたサーフェス
閉じたサーフェス
サーフェスは開いているかまたは閉じているかどちらかの状態です。開いたサーフェスは、形状を表す薄いジオメトリですが、厚みはありません。ゴムや紙の一片を思い浮かべてみてください。このようなサーフェスは、表からも裏(左のイメージで青で表示)からも見ることができます。閉じたサーフェスは中を見ることはできませんが、中身がありません。膨らんだ風船(右のイメージ)を想像してみてください。
トリムされたサーフェスとトリムされていないサーフェス




トリムされていないサーフェス
トリムされたサーフェス
トリムされていないサーフェス とは、すべてのエッジが「ネイティブ」 (自然)の
NURBS
エッジであるサーフェスのことです。特異点 を除いて、トリムされていないサーフェスは、常に4つのエッジを持ちます。これらは真の数学的エッジです。
MatchSrf
や
MergeSrf
などのいくつかのRhinoのコマンドは、トリムされていないジオメトリのみを受け付けます。トリムされていないサーフェスを使ったモデリングは、このような場合に優位です。
トリムされたサーフェス は、
Trim
や
Split
コマンドを使用してサーフェスを曲線や別のサーフェスでトリムしたり、分割したりした時に作成されます。
PlanarSrf
などのコマンドは、トリムされたサーフェスを直接作成できます。
トリムされたサーフェスも形状は長方形のパターンに配置された
制御点
のセットで定義されます。
サーフェスがトリムされているかそうでないかを把握しておくことは重要です。
Properties
コマンドを使用すると、サーフェスがトリムされているかどうかを調べることができます。
この長方形のパターンのサーフェス(基底サーフェス)は、トリムエッジからはみ出す場合がありますが、Rhinoはトリム曲線の外側にある部分は描画しないので、目には見えません。それぞれのトリムされたサーフェスは、その基底サーフェスジオメトリについての情報を保持しています。
Untrim
コマンドを使用すると、トリムの境界線を取り除き、「ネイティブ」 (自然)のエッジを復元させることができます。
サーフェスを横切るトリム曲線がある場合、そのトリム曲線自体はサーフェスの制御点構造とは何の関係もありません。 。これは、トリムサーフェスを選択し、制御点をオンにすれば分かります。(サーフェスを選択後、 を押します。)制御点をオンにすると基底サーフェス全体の制御点が表示されます。
特異点
特異点とは、エッジが1つの点に折りたたまれたものです。曲線を軸の周りで回転させて形成したサーフェスには、回転軸上に特異点が生じることがよくあります。球の極を思い浮かべてみてください。

次数 (曲線またはサーフェス)
NURBSジオメトリを定義する要素は次の 4 つです:
- 次数
- 制御点
- ノット
- 評価ルール
NURBS 関数は、有理多項式です。 NURBS の次数は多項式の次数です。 多項式とは、y = 3x3 –2x +1のような関数です。多項式の次数は、変数の最大指数です。例えば、3x3 –2x + 1の次数は3で、–x5 + x2の次数は5です。
NURBS モデリングの視点で見ると、(次数–1)は、各スパンにおいて得られる「湾曲」の最大数です。これは、曲線の形状にどれだけ影響を与えられるかを決定します。
例:
-
線は 次数1 です。線には 2つの制御点 があります。 湾曲はありません 。
-
放物線、双曲線、円弧、円(円錐断面曲線)は 次数2 です。これらには 3つの制御点があります 。 湾曲は1つ です。
-
3次ベジェは 次数3 です。制御点をジグザグ形状に配置すると、2つの湾曲が得られます。
制御点

制御点は曲線やサーフェスの形状に影響します。制御点には、位置、方向、ウェイトなどの情報が含まれます。制御点の位置を移動して、曲線やサーフェスの形状を細かく調整できます。Rhinoには、制御点を編集するためのさまざまなツールがあります。後のいくつかのチュートリアルでは、制御点の操作方法を紹介します。
制御点を移動すると、曲線やサーフェスが変化し、Rhinoはそれを滑らかに再描画します 。
Move
、
Copy
、
Rotate
、
Scale
のようなRhinoの変換コマンドを用いると、それぞれの、または複数の点を操作できます。
ポリサーフェス (NURBS)
ポリサーフェス は、2つまたはそれ以上のサーフェスを結合したものです。ポリサーフェスで体積を包括するものはソリッドを定義します。

SolidPtOn
マンドを使用すると、ポリサーフェスの(制御点のように動作する)グリップ点をオンにすることができます。ただし、オブジェクトの構造を損なわないように、これらの点の編集は直線方向に制限する必要があります。
ソリッド
サーフェスまたはポリサーフェスで体積を包括しているものを ソリッド と呼びます。ソリッドは、サーフェスまたはポリサーフェスが完全に閉じられた時にできます。Rhinoでは、1つのサーフェスからなるソリッド、ポリサーフェスのソリッド、押し出しソリッド、メッシュのソリッド、そしてSubDのソリッドを作成できます。
1つのサーフェスを巻いて、それ自体を結合してソリッドを作ることが可能です。コマンドの例には、
Sphere
、
Torus
、
Ellipsoid
があります。1つのサーフェスでできるソリッド上の
制御点
は表示することができ、それらの制御点はサーフェスの形状を変えるために動かすことができます。

Rhinoのコマンドには、 ポリサーフェスのソリッド を作成するものもあります。ポリサーフェスのソリッドを作成するコマンドの例には、
Pyramid
、
Cone
、そして
TruncatedCone
があります。

SubDジオメトリ
Rhinoの SubDオブジェクト は、高精度のCatmull Clarkサブディビジョンサーフェスで、複雑な有機形状を素早くモデリング、編集できるように設計されています。

RhinoのSubDは、頂点、エッジ、面で構成されています。これらを押したり引いたりすることで、オブジェクトを形作ることができます。SubDを粘土のようなものだと考えてください。
メッシュジオメトリ
メッシュ は、多面体オブジェクトの形状を定義する頂点とポリゴンの集合体です。Rhinoのメッシュは三角形と四角形で構成されます。 NURBS と同じように、メッシュは開いているかまたは閉じている(ソリッド)かどちらかの状態です 。

多くのプログラムは、レンダリングやアニメーション、デジタル製造、ビジュアリゼーション、有限要素解析(FEA)など、ジオメトリを表現するのにポリゴンメッシュを使います。
Mesh
コマンドは
NURBS
ジオメトリをポリゴンメッシュに変換します。 Rhinoは、多くのメッシュ形式ファイルを読み書きできます。メッシュオブジェクトを作成するには、
MeshSphere
、
MeshBox
、
MeshCylinder
のようなコマンドを使用します。
Rhinoにはその他にもメッシュで作業するためのコマンドを揃えています。
軽量押し出し
軽量押し出し
は、
NURBS
オブジェクトに通常必要な曲線のネットワークの代わりに輪郭曲線と長さのみを入力情報として使用します。
Box
、
Cylinder
、
Tube
、
ExtrudeCrv
コマンドは押し出しオブジェクトを作成します。押し出しオブジェクトは、 開いているか、平面状のキャップで閉じることもできます 。

必要な場合、いくつかのコマンドによってはこれらのオブジェクトは、編集のための情報をより追加するために、ポリサーフェスに変換されます。
PointsOn
コマンドを使用するか、
を押すと、押し出し点を表示できます。